勤務医の新NISA出口戦略|4%ルール・年金・非常勤、そして一番大事な「支出の把握」
2026年6月30日

📌 この記事でわかること
- ✅ 4%ルールは「正解」ではなく、考え方の物差しとして知っておけばいい
- ✅ 年金は厚生年金をアテにせず、老齢基礎年金で保守的に下限を見積もる
- ✅ 足りない分は、勤務医なら非常勤で補える。そのために「相場」を知っておく
- ✅ 出口の不安を消す一番の方法は、ふだんから「支出」を把握しておくこと
新NISAの話題は、たいてい「何を買うか」「いくら積み立てるか」に集中する。ぼくも以前、オルカン1本に決めた話を書いた。でも、貯めたお金は最後に「使う」ためにある。今日は、まだ取り崩していないぼくが、今のうちに考えている「出口」の設計図を書いてみたい。
🎯 なぜ30代で「出口」を考えるのか
出口の話は60代になってから——そう思う人が多い。でも、ゴールの位置を知らないまま走り続けるのは、意外としんどい。「だいたいこのくらい貯まれば、こう使えばいい」というイメージがあるだけで、途中で不安になって投資をやめてしまうことが、ぐっと減る。出口の設計は、引退間近の人より、むしろ積立の途中にいる現役世代にこそ効く。
チワゴ
どくたろうさん、新NISAって「貯める」話ばっかりで、貯めた後どう使うかって、あんまり想像できなくて。
どくたろう
いい質問だね。ぼくもまだ取り崩してはいないけど、ゴールを先に知っておくと、積立を続けやすくなるんだよ。マラソンも、あと何キロか分からないまま走るのはきついでしょ。
📐 4%ルールは「物差し」として知っておく
取り崩しの目安としてよく登場するのが「4%ルール」だ。これはアメリカのトリニティ大学の研究者が1998年に発表した研究(通称トリニティ・スタディ)がもとになっている。資産の4%を毎年取り崩していっても、30年たっても高い確率で資産が残っていた、という内容だ。
ただし、この研究はアメリカの株式・債券、アメリカの市場データが前提になっている。円で暮らし、日本の年金を受け取るぼくたちに、数字をそのまま当てはめるのは無理がある。為替の影響も無視できない。だから4%ルールは「正解」ではなく、「だいたい資産の4%くらいなら無理のない取り崩しの目安になりそうだ」という"物差し"として持っておくのがちょうどいい。
チワゴ
4%なら安心、ってわけじゃないんですね。
どくたろう
そう。鵜呑みにするんじゃなくて、考え方の枠組みとして使う。これくらいの距離感がいいんだ。
積立期に期待リターンとして話してきた7%(オルカンの想定)と、この4%はまったくの別物。7%は「増えるスピードの目安」、4%は「取り崩すスピードの目安」。混同すると判断を誤るので、必ず分けて考える。
💰 年金は「老齢基礎年金」で下限を見積もる
取り崩し額を決める前に、土台になる年金を見ておきたい。ただ勤務医の年金は、人によって大きく変わる。常勤だった期間、非常勤だった期間、開業の有無で、厚生年金の額はまるで違う。だから厚生年金をアテにして計算すると、見込みが狂いやすい。
ぼくは「下限」を老齢基礎年金で押さえることにしている。2026年度の満額は年84万7,300円、月にして約7万円。これは40年きっちり納めた場合の満額だが、まずはこの基礎部分だけで生活の土台を考える。厚生年金は、そこに上乗せされるボーナスくらいの位置づけにしておく。多めに見積もって足りないと困るが、少なめに見て余るぶんには困らない。お金の計画は、悲観側に倒しておくほうが安心だ。
チワゴ
少なめに見ておくんですね。
どくたろう
そう。「最低ラインは年金、足りない分を資産と労働で埋める」という順番で考えると、計画が崩れにくいんだ。
🩺 足りなければ非常勤で補える——だから「相場」を知っておく
ここが勤務医の強みだ。年金と資産の取り崩しだけでは少し足りない、となっても、ぼくたちには「資格」がある。フルタイムでなくても、週1回の外来や当直のスポットで働ける。月に数万円でも収入があれば、そのぶん資産を取り崩さずに済む。
ただ、いざ足りなくなってから慌てて探すのは効率が悪い。大事なのは、現役のうちから「週1で働くといくらになるか」という相場感を持っておくことだ。スポットの仕事をその都度探すのは労力がかかるし、毎回違う施設に行くのは、定年後の体にはこたえる。それより、同じ施設で週1の枠を続けるほうがコスパがよく、負担も少ない。もし不足額が大きければ、週2、週3と増やせばいい。「いくら足りないか」に応じて、働く量を後から調整できるのが、この働き方の強みだ。
チワゴ
完全に辞める、じゃなくていいんですね。
どくたろう
そう。「ゆるく働きながら、少しずつ取り崩す」。これができるのが、ぼくたちの一番の武器だよ。
ちなみに「働くと年金が減る」という心配も、以前ほど気にしなくていい。2026年4月から基準が変わり、賃金と厚生年金の合計が月65万円を超えなければ調整されない(以前は51万円)。しかも老齢基礎年金は、もともと調整の対象外だ。
✂️ 現役を退けば「消える支出」がある
出口を考えるとき、収入や資産ばかりに目が行くが、実は「支出」のほうに大きなヒントがある。現役のあいだの支出には、「医師という仕事を続けるためのコスト」がかなり混ざっているからだ。引退すれば、これらは基本的に消える。
引退で消えやすい「職業維持コスト」
- 学会費・出張費
- 専門書、勉強や自己研鑽の費用
- 付き合いの飲み会や交際費
- 通勤費(仕事用の車を手放せる人も)
- 2拠点生活なら、病院の近くに借りている部屋の家賃
チワゴ
たしかに、学会とか、引退したら行かないですもんね。
どくたろう
車も、仕事のために持っているなら手放せる。維持費は年間で結構な額になる。2拠点の先生なら、片方の家賃がまるごと消えるしね。
「老後はいくら必要か」という不安は、現役時代の支出をそのまま将来に引き延ばして計算するから、実際以上に大きく見える。職業を維持するためのコストが剥がれ落ちれば、基礎的な生活費はそこまで高くないことが多い。
📊 結局いちばん大事なのは「支出の把握」
ここまで来ると分かるが、出口の不安は、突き詰めると「いくら必要か分からない」という不安だ。必要額さえ見えれば、4%ルールも年金も、自分の数字に当てはめて落ち着いて考えられる。だから出口設計の出発点は、立派な資産額ではなく、自分の支出を把握することにある。ぼくがやっているのは、難しいテクニックではない。
ぼくの「支出を見える化」する習慣
- 家計簿アプリで、支出の全体をいつでも見える状態にする
- カードは基本1枚に集約する(あちこちで使うと把握が一気に難しくなる)
- 口座の数も最低限に絞る
- 年1回は家族で「お金の会議」をして、今いくらあって何にいくら使っているかを夫婦で共有する
チワゴ
特別なことはしてないんですね。
どくたろう
そう。「いつでもお金の全体像が見える状態」を平時から作っておくだけ。これができていれば出口の設計はずっと現実的になるし、逆にここがあいまいだと、いくら資産があっても不安は消えないんだ。
🔀 「どの口座から崩すか」は別記事で
なお、現金・課税口座・NISA・iDeCoのうち、どれを先に取り崩すと有利かという「順番」の話は、税金もからんで奥が深い。今日はあくまで考え方の骨格に絞り、取り崩し順序はまた別の記事でじっくり扱う。
📋 この記事のまとめ
- ✅ 4%ルールは正解ではなく「考え方の物差し」として知っておく
- ✅ 積立期の7%(増えるスピード)と取り崩しの4%(使うスピード)は別物
- ✅ 年金は厚生年金をアテにせず、老齢基礎年金(月約7万円)で下限を見積もる
- ✅ 足りなければ非常勤で補える。現役のうちに「週1の相場」を知っておく
- ✅ 現役を退けば「職業維持コスト」(学会・出張・専門書・付き合い・通勤・2拠点)が消える
- ✅ 出口の不安を消す一番の方法は、ふだんから支出を把握しておくこと
どくたろう
出口の話は、結局「家計の把握」に戻ってくる。今からその習慣を作っておけば、将来あわてないで済むよ。