勤務医が今も払っている保険は4つだけ|年9万円、生命保険はゼロ
2026年7月9日

📌 この記事でわかること
- ✅ 保険を精査し続けた勤務医が、最終的に残した4つの保険と年間保険料
- ✅ 残した保険と捨てた保険を分ける、たった一つの判断基準
- ✅ 高額療養費の上限が「月8〜9万円」ではない人たちの話
- ✅ 医師賠償責任保険と個人賠償責任保険を、なぜ削らないのか
- ✅ 削った保険料の差額を投資に回すと、25年でいくらになるか
子どもが2人いる。勤務医として働いている。そして生命保険には入っていない。
こう書くと、無謀に見えるかもしれない。だがこれは、10年かけて一つずつ保険を精査してきた結果、たどり着いた現在地だ。
このブログでは、変額保険、個人年金保険、医療保険、車両保険について「なぜ入らないのか」「なぜ解約したのか」を書いてきた。削る話ばかりだ。では、結局何を残したのか。今日はその答えを書く。
今も払っている4つの保険
チワゴ
先生、保険を解約した話はたくさん読みました。でも逆に、今も入っている保険ってあるんですか?
どくたろう
あるよ。4つだけ。合計で年91,600円だ。
チワゴ
え、生命保険が入ってない……!お子さん2人いるのにですか?
どくたろう
入っていない。大丈夫だと判断できたから外した。判断せずに入り続けるほうが、ぼくは怖い。
自動車保険は車両保険を外して年8万円から3万5,000円に下げた。火災保険は賃貸の家財と借家人賠償だ。この2つはすでに記事にしている。
残りの2つ、医師賠償責任保険と個人賠償責任保険については、このブログでまだ一度も書いていない。
4つを並べて、はじめて気づいたこと
この4つを書き出したとき、共通点に気づいた。4つとも、お金が「他人に払われる」保険なのだ。
医師賠償責任保険は患者側へ。自動車保険の対人・対物は事故の相手へ。火災保険の借家人賠償は大家へ。個人賠償責任保険は、自転車でぶつかってしまった相手へ。どれも、自分や家族が受け取る金ではない。
チワゴ
言われてみれば……全部、誰かに払うための保険ですね。
どくたろう
そう。じゃあ逆に、ぼくが解約してきた保険を並べてみようか。
チワゴ
えっと、収入保障保険、変額終身保険、個人年金保険、車両保険……。
どくたろう
全部「自分か家族が受け取る金」のための保険だ。医療保険にいたっては、一度も入ったことがない。
チワゴ
残したものと捨てたもので、きれいに分かれてる!
どくたろう
意識してそうしたわけじゃないんだ。一つずつ計算していったら、結果的にこうなっていた。
「自分がもらう金」を、保険で買わない理由
理由は単純だ。自分がもらう金は、いくら必要かを計算できる。そして計算できるものは、貯蓄と投資で用意できる。
医療費がかさんだときは、高額療養費制度で1か月の自己負担に上限がある。
自分が死んだときは、遺族年金がある。2026年度の遺族基礎年金は、子ども2人の期間で年1,334,900円。月にすると約11万円で、子どもが18歳になった年度の末日まで支給される。勤務医なら、ここに遺族厚生年金が上乗せされる。
チワゴ
遺族年金だけで月11万円以上……思ったより手厚いんですね。
どくたろう
そう、みんな公的保障を小さく見積もりすぎている。ぼくもかつては保険に入っていたけど、根拠のある金額だけにした。
かつて加入していた収入保障保険の保障額は月10万円。妻が働いておらず資産も少なかった時期に、遺族年金を織り込んだうえで「不足するのは月10万円」と計算して決めた。その後、妻が働きはじめ、資産も積み上がり、不足額はゼロに近づいた。だから解約した。
💡 「不安だから入る」のではなく、「不足額を計算して、足りない分だけ入る」。足りていれば、入らない。
勤務医は、自分の所得区分で計算する
ここで一つ、勤務医だからこそ注意したいことがある。
高額療養費の自己負担上限は「月8〜9万円」と紹介されることが多い。だがそれは、年収約370万〜770万円の区分(区分ウ)の話だ。
2026年8月の改定で、区分ウの上限は85,800円+医療費の1%になった。一方、年収約770万〜1,160万円の区分(区分イ)は179,100円+1%。さらに2027年8月には所得区分が5区分から13区分に細分化され、引き上げ幅は所得が高いほど大きい。
チワゴ
区分が違うと、上限が2倍以上になるんですか!?
どくたろう
そう。勤務医の多くは区分ウじゃない。「月9万円で足りる」という前提で手元の現金を決めていると、いざというとき不足する。
チワゴ
それに上限が上がるなら、やっぱり医療保険が必要なんじゃ……。
どくたろう
上がっても「上限がある」ことは変わらない。天井の高さが変わっただけだ。
ぼくが手元に置いている現金は、自分の所得区分の上限を基準に決めている。天井の高さがわかっているなら、その高さぶんを自分で用意すればいい。保険会社に手数料を払って、用意してもらう必要はない。
なお、2026年8月からは年間の自己負担上限も新設された(区分ウで年53万円)。治療が長く続く場合の見通しは、むしろ立てやすくなっている。
「他人に払う金」には、上限がない
では、なぜ残した4つには払い続けるのか。天井がないからだ。
自分の医療費には上限がある。家族に残す額も計算できる。だが、他人に与えてしまった損害の額は、自分では決められない。相手が誰で、どんな損害が生じたかで決まる。数万円で済むこともあれば、自分の資産では到底払いきれない額になることもある。
計算できないものは、貯蓄では用意できない。だから保険を使う。これが、10年かけてたどり着いた判断基準だった。
💡 保険は「自分がもらう金」には使わない。「他人に払う金」にだけ使う。
チワゴ
あ、だから車両保険は外したんですね。自分の車を直すお金だから。
どくたろう
その通り。修理費という上限があるなら、浮いた保険料を積み立てて自分で備えればいい。
医師賠償責任保険——病院の傘は、どこまで及ぶのか
年5万円。4つのなかで最も高く、そして最も迷わずに払い続けている。
チワゴ
でも先生、医賠責って病院が入ってくれてるんじゃないんですか?
どくたろう
入っていることは多い。ただ、その補償がどこまで及ぶかは、勤務先や契約内容によって違うんだ。
チワゴ
どこまで、というと?
どくたろう
たとえば常勤先での診療は対象でも、非常勤先での診療がどう扱われるかは、また別の話になりうる。
ぼくには非常勤の勤務もある。だから、病院に守ってもらえない可能性があると感じている。個人で加入しているのは、そのためだ。
医師にとって訴訟は、人生における危機的なイベントになりうる。だからこそ、リスクヘッジが重要だと考えている。
チワゴ
「病院が入ってるから大丈夫」って思ってる先生、多そうです……。
どくたろう
思っているだけなら、確認したことにはならない。ぼくも、確認するまでは知らなかった。
年5万円は安くない。だが、生命保険を捨てた人間が、この5万円だけは削らない。それがぼくの答えだ。
この記事で唯一おすすめしたいのは、勤務先の補償の範囲を一度確認することだ。書類はどこかにある。読むのに10分もかからない。
個人賠償責任保険——年1,600円で、切れ目をなくす
月にすると133円。自転車で他人にぶつかったとき、子どもが他人のものを壊したとき、日常生活で他人に損害を与えたときに使う保険だ。
チワゴ
133円!?ジュースより安いじゃないですか。
どくたろう
安いだろう。「他人に払う金」の備えは、実は驚くほど安く買えるんだ。
この保険は、火災保険や自動車保険の特約、あるいはクレジットカードに付帯していることが多い。ぼくの場合は、偶然どれにも付帯がなかったので単独で契約している。ただ、仮に付帯があったとしても、単独で入っていたと思う。
特約は、親となる契約に紐づいている。火災保険を乗り換えたとき、自動車保険を見直したとき、カードを解約したとき、特約は静かに消える。そして本人は、消えたことに気づかない。補償が欠けてしまう期間を、避けたかった。
チワゴ
保険を減らしてきた先生が、ここはあえて単独契約……。
どくたろう
減らすことが目的じゃないからね。他人に払う金には、確実性を買っている。
子どもが扉に穴を開けたときのように、日常の事故は予告なくやってくる。年1,600円で、切れ目のない備えが手に入る。
削った分は、年121,400円
もし解約せずに払い続けていたら、いくらだったのか。
現在は年91,600円。差額は年121,400円、月にすると約1万円だ。
この差額を全世界株式インデックスファンド(オルカン)に積み立て、年率7%で運用できたと仮定する。
チワゴ
保険をやめただけで、820万円……!
どくたろう
やめたんじゃない。必要な保険だけを残した。その結果だ。
年率7%は過去の長期平均を参考にした試算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。また、必要な備えは人によって違います。この記事は保険の解約を勧めるものではありません。
まとめ
- ✅ 今も払っている保険は4つ、年91,600円。生命保険には入っていない
- ✅ 残した4つは、すべて「他人に払う金」のための保険だった
- ✅ 自分がもらう金は計算できる。計算できるものは、貯蓄と投資で用意する
- ✅ 高額療養費の上限は「月8〜9万円」とは限らない。自分の所得区分で確認する
- ✅ 医師賠償責任保険は、勤務先の補償が及ぶ範囲を確認したうえで判断する
- ✅ 個人賠償責任保険は年1,600円。特約は、親契約とともに消えることがある
- ✅ 削った差額は年121,400円。25年・年率7%で約820万円になる計算だ
保険を減らそうとしなくていい。自分がどこまで守られているかを、数えるだけでいい。数え終えたとき、残るものは思ったより少ない。そして、その少ないものには、迷わず払える。
チワゴ
わたしもまず、自分が何に入っているか書き出すところから始めます!
どくたろう
それで十分。保険を見直す日は、人生で数日あれば足りる。あとは、医療に集中しよう。