高校無償化、所得制限が撤廃された2026年——勤務医が教育費の試算を下げなかった理由
2026年8月10日

📌 この記事でわかること
- ✅ 2026年4月、高校の授業料支援がどう変わったか(公立・私立の上限額)
- ✅ 所得制限に外され続けてきた勤務医にとって、本当に変わったもの
- ✅ 「無償化」でも消えない自己負担と、申請しないと1円も出ない仕組み
- ✅ 「代わりに扶養控除が縮小される」という話が、その後どうなったか
- ✅ それでも教育費の試算を下げずに準備を続ける理由
2026年4月、高校の授業料を支援する「高等学校等就学支援金」から、所得制限が完全に撤廃された。
ぼくにとって、これは初めて「対象に入った」子育て支援制度だ。
ただ、正直に書くと、いちばん嬉しかったのは金額ではなかった。
📊 2026年4月、所得制限が消えた
チワゴ
先生、高校の無償化がニュースになっていましたけど、あれって全員が対象なんですか?
どくたろう
そう。2026年4月から所得制限がなくなった。年収がいくらでも、公立でも私立でも支援が出る。
支給の上限額はこうなっている。
📊 就学支援金の支給上限(2026年4月〜)
- 公立高校:年11万8,800円
- 私立高校:年45万7,200円
- 私立の通信制:年33万7,200円
所得制限なし。全世帯が対象。
私立の45万7,200円は、全国平均の授業料水準に合わせた金額だ。それまでは上限が39万6,000円で、しかも年収約590万円未満の世帯に限られていた。
文部科学省の試算では、今回新たに支援が拡充される世帯は、年収約590万〜910万円で約35万人、年収約910万円以上で約45万人。合わせて約80万人にのぼる。
チワゴ
年収910万円以上で45万人……けっこう多いですね。
どくたろう
これまで完全に外されていた層だ。ぼくもそこにいた。
🚧 「対象外」と、線を引かれ続けてきた
ぼくは子育て支援のニュースを、読み飛ばしていたわけではない。むしろ普通に見ていた。
ただ、見るたびに同じところで止まる。所得制限の欄だ。
児童手当もそうだった。2024年10月に所得制限が撤廃されるまで、ぼくの家庭は対象外だった。以前の記事にも書いたが、足りない分は自分で補填して、毎月2万円を子ども用の口座に入れ続けてきた。制度に文句を言っても、自分の家計は1円も変わらないからだ。
チワゴ
不満はなかったんですか?
どくたろう
損得の話なら、なかった。自分でやればいいだけだからね。ただ、毎回「あなたは対象外です」と線を引かれる。そこに残るのは疎外感だった。
支援額が小さいという話ではない。お金の不足なら、自分の働きで埋められる。埋められないのは、毎回引かれる線のほうだった。
だから今回いちばん変わったのは、ニュースを読むときの姿勢だった。所得制限という四文字を、もう探さなくていい。
チワゴ
金額よりも、そっちなんですね。
どくたろう
金額が小さいという意味じゃない。お金なら、自分で働いて何とかできる。でも、引かれた線だけは自分では消せなかった。
💰 「無償化」でも、自己負担は消えない
ここからは、制度の中身を正確に見ておく。
無償化という言葉のイメージほど、教育費がゼロになるわけではない。支援の対象は、あくまで授業料だけだ。
⚠️ 支援されないもの
- 入学金(私立で20万円程度が目安)
- 通学費、定期代
- 教材費、制服代、設備費
- 部活動費、修学旅行費
これらは従来どおり自己負担になる。さらに、授業料が支給上限を超える学校なら、その差額も自腹だ。
文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」(2026年1月公表の訂正版)によると、私立高校(全日制)に通う生徒1人あたりの年間学習費総額は約117万9千円。公立高校でも約59万7千円だ。授業料が支援でまかなえても、残りは大きい。
チワゴ
じゃあ「無償」というのは、あくまで授業料の話なんですね。
どくたろう
そう。ここを勘違いすると、進学のときに足が出る。
📝 申請しないと、1円も出ない
もうひとつ、見落とされやすい点がある。
就学支援金は、自動的に振り込まれる制度ではない。申請しなければ受け取れない。
手順はこうだ。入学後に学校からログインID通知書が配られ、それを使って「e-Shien」というオンライン申請システムで手続きする。締切は学校ごとに違うが、4月中が一般的だ。
このとき必要になるのが、保護者のマイナンバーだ。マイナンバーカードがあれば手続きは早く終わる。カードの登録については別の記事に書いた。
さらに、在校生も毎年「在校生受給資格確認」という手続きがある。
チワゴ
所得制限がなくなっても、手続きは必要なんですね。
どくたろう
制度は、知っていて動いた人にしか届かない。そこは前から変わっていないよ。
🧾 「代わりに扶養控除が縮小される」はどうなったのか
この話題を調べていると、必ず出てくる情報がある。
「高校が無償化される代わりに、高校生(16〜18歳)の扶養控除が縮小される。所得税は38万円から25万円へ、住民税は33万円から12万円へ。実質は増税だ」——というものだ。
これは実際に議論されていた案だ。児童手当が高校生年代まで拡大されたことで、15歳以下とのバランスを取るという理屈だった。
ただし、2026年8月の時点で、この縮小は実施されていない。
📌 扶養控除の縮小は「見送り」になっている
- 令和8年度税制改正大綱(2025年12月26日公表)に、縮小は盛り込まれなかった
- 2027年分の所得税、2028年度分の個人住民税までは、現行の38万円・33万円が維持される
- ただし大綱には「引き続き検討を進め、結論を得る」と書かれている
チワゴ
じゃあ、増税されるっていう記事は間違いなんですか?
どくたろう
書かれた当時は間違いではなかった。ただ、そのあとに見送りが決まった。情報が更新されていないだけだ。
つまり2026年8月の勤務医は、無償化の恩恵をそのまま受けながら、扶養控除も従来どおり残っている。かなり得な局面にいる。
ただし「引き続き検討」という一文が残っている以上、この状態が続く保証はどこにもない。
🎯 それでも、教育費の試算は下げない
ここで多くの記事は「浮いたお金を投資に回そう」と続ける。ぼくは違う判断をした。
以前の記事で、幼稚園から大学まで公立・国立で通った場合の教育費を約850万円と試算した。このうち高校の3年間は約160万円だ。
今回の改正を反映すれば、この数字は下がる。それでもぼくは、試算を下げないことにした。
チワゴ
どうしてですか?計算し直したら、余裕が出るんじゃないですか。
どくたろう
余裕が出るのはそのとおりだ。でも、その余裕は数字の上で消すんじゃなく、実物として持っておきたい。
理由は3つある。
ひとつ目は、上振れへの備えだ。うちは私立も視野に入れている。私立に進めば、支給上限を超えた授業料も、入学金も通学費も乗ってくる。試算を削った状態でそれに当たれば、家計が痛む。
ふたつ目は、制度が動くからだ。さきほどの扶養控除がいい例で、いったん見送られても議論そのものは残っている。制度を前提に準備額を削れば、制度が動いたときに家計まで一緒に揺れる。
みっつ目は、削って得るものが小さいからだ。準備額を下げて手元の余裕が増えても、その分は結局どこかで使ってしまう。それなら当初の試算のまま積み立てておいて、余ったら子ども自身の資産として残せばいい。
チワゴ
制度が良くなっても、設計は変えないんですね。
どくたろう
制度に合わせて動く設計は、制度が変わるたびに壊れる。動かなくていい形にしておくのが、結局いちばんラクなんだ。
教育費の柱は、ジュニアNISAで2人分を積み終えている。児童手当ぶんの月2万円は現金のまま貯めていて、2027年にこどもNISAが始まったら、そこから投資を再開する予定だ。
今回の改正は、この設計を何ひとつ変えなかった。変わったのは、ニュースを読むときの気分だけだ。ぼくにとっては、それで十分だった。
まとめ
- ✅ 2026年4月、就学支援金の所得制限が完全撤廃。公立は年11万8,800円、私立は年45万7,200円が上限になった
- ✅ 勤務医にとって大きかったのは金額より、「対象外」と線を引かれなくなったこと
- ✅ 支援されるのは授業料だけ。入学金・通学費・教材費・制服代は従来どおり自己負担
- ✅ 申請しないと支給されない。e-Shienで4月中に手続きし、在校生も毎年確認が必要
- ✅ 「代わりに扶養控除が縮小される」は見送り済み。ただし「引き続き検討」の文言は残っている
- ✅ 制度が良くなっても、教育費の試算は下げない。制度に依存しない設計にしておく
所得制限が消えたことで受け取れる額は、決して小さくない。それでも、いちばん変わったのは金額ではなく、子育て支援のニュースを自分の話として読めるようになったことだった。制度は今後も動く。だからこそ、動いても崩れない準備を続けておく。今日できるのは、進学までの残り年数と、いま準備できている額を並べて見ておくことだけです。
⚠️ 免責事項
この記事は著者個人の経験と考え方にもとづくものです。就学支援金の支給額・申請方法・締切は学校や自治体によって異なり、今後変更される可能性があります。扶養控除の取扱いも今後の税制改正で変わる可能性があります。教育費の試算は一般的なモデルケースに基づくもので、実際の金額は個人の状況により異なります。記載の制度内容は2026年8月時点の情報です。最新の情報は文部科学省、在学校、お住まいの自治体の公式情報をご確認ください。この記事は特定の商品の購入を勧めるものではありません。