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家計管理

勤務医は家を買うべきか——2年・2年・10年、医局人事で3回動いた末の結論

2026年7月24日

勤務医は家を買うべきか——2年・2年・10年、医局人事で3回動いた末の結論

📌 この記事でわかること

  • ✅ 医局人事で3回動いた勤務医が、持ち家を選ばなかった理由
  • ✅ 家賃9万円・自己負担7万円という住居費の実際
  • ✅ 転勤すると住宅ローン控除がどうなるか(継続・再適用・期限)
  • ✅ 貸していた家に戻ると、控除の再開が1年遅れること
  • ✅ 住宅ローン控除の所得要件が「毎年」判定されるという話

子どもが生まれたとき、一度だけ家を買うことを考えた。

考えて、やめた。理由は金利でも税制でもない。

転勤になったとき、家族はその家に残り、ぼくだけが赴任先で暮らす。それが何年か続くかもしれない。その生活を、自分は選べるか。

答えは出なかった。数字を計算する前に、そこで止まった。順番としては、勇気の話が先で、損得の話は後だった。

チワゴ

チワゴ

先生って、ずっと賃貸なんですか? お医者さんならみんな家を買うイメージでした。

どくたろう

どくたろう

よく言われる。でもぼくは一度も買っていないよ。

結果として、ぼくは今の場所に10年以上住んでいる。あのとき買っていれば、たぶん何の問題も起きていない。それでも、判断そのものは間違っていなかったと思っている。この記事では、その理由を書く。

🏥 2年・2年・10年——動いた期間より、動かなかった期間のほうが長かった

医師になってからの転居は3回。すべて医局人事で、自分で選んだものは一つもない。

在籍した年数はこうだ。

2年 → 2年 → 現在10年以上

最初の4年は落ち着く暇がなかった。ところが3か所目に来てから、気づけば10年が過ぎている。

チワゴ

チワゴ

10年も同じ場所なら、買っても問題なかったんじゃないですか?

どくたろう

どくたろう

結果から見ればそうだね。でも「10年住める」とわかったのは、10年住んだ後なんだ。

チワゴ

チワゴ

あ……。決めるときには、まだわからなかったってことですね。

ここが大事なところだと思っている。10年住めるとわかったのは事後であって、判断した時点では誰も保証してくれなかった。医局人事は辞令が出てから知るもので、来年動くかどうかを自分では決められない。

そして10年経った今も、その立場は何一つ変わっていない。次の辞令が明日出ても、ぼくは文句を言えない。

住宅ローンは35年、住宅ローン控除は13年。この時間軸に対して、自分の側だけが1年先も約束できない。そこがぼくにとっての結論だった。

💰 住居費の実際——家賃9万円、自己負担7万円

今の住まいは民間の賃貸で、家賃は9万円。家賃補助が2万円出るので、自己負担は7万円だ。

初期研修のころは宿舎で、家賃は2万円だった(研修医が卒後3年で奨学金360万円を完済した話)。それ以降は病院の周囲で民間の物件を探している。

年84万円。今の条件が10年続いたとすれば、840万円

チワゴ

チワゴ

840万円って……。それだけあれば頭金になっちゃいますよね。

どくたろう

どくたろう

そう見えるよね。ただ、比べるときに一つ抜けている視点があるんだ。

住む場所の条件を、ぼくは自分で選んでいない。

宿舎がある病院なら2万円で済み、そうでなければ9万円かかる。転勤のたびに住居費の水準が変わり、それを事前に見積もることができない。持ち家の返済額は動かないが、勤務医の住居環境のほうが動く。

📋 持ち家を選んだ場合、転勤で何が起きるか

ここからは、実際に確認した制度の話をする。

① 単身赴任なら控除は続く。ただし条件がある

単身赴任で家族が自宅に住み続ける場合、住宅ローン控除は継続して受けられる。ただし無条件ではない。取得から6か月以内に生計を一にする親族が入居し、その後も住み続けていて、事情が解消したら所有者も戻って一緒に住むと認められること——これが要件になっている。

一方、家族全員で赴任先に移ると、その期間は控除の対象外になる。

② 戻れば再適用できるが、期間は延びない

転勤から戻って残りの控除期間があれば、再適用を受けられる。ただし転勤していた期間も控除期間としては消費される。止まって待ってくれるわけではない。

チワゴ

チワゴ

住んでいない間も、13年のカウントは進んじゃうんですか。

どくたろう

どくたろう

そう。3年間家族で赴任すれば、13年のうち3年分は使えないまま消える。

③ 貸していた場合、再開は「翌年」から

これは知らないと損をする部分だ。再適用は、再び住み始めた年から受けられる。ただしその年に家を賃貸に出していた場合は、翌年からになる。空き家にしていたか、貸していたかで1年ずれる。

チワゴ

チワゴ

貸していたほうが家賃収入もあるし、得な気がしていました。

どくたろう

どくたろう

収入は入る。ただ控除の再開は1年遅れる。どちらが有利かは金額次第だね。

④ 事前の届出を忘れると、そもそも再適用できない

再適用には、家に住まなくなる日までに「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を税務署に出しておく必要がある。引っ越しの慌ただしさの中で、これを覚えていられるかどうか。

チワゴ

チワゴ

引っ越し前って、いちばんバタバタしている時期ですよね……。

⑤ 空いた家を貸すには、銀行の承諾がいる

住宅ローンは本人が住むことを前提にした融資だ。無断で賃貸に出すと資金使途違反にあたり、一括返済を求められることがある。転勤という事情があれば認められるケースも多いが、判断は金融機関ごとに違う

⑥ 売るなら、3年という期限がある

マイホームを売ったときの3,000万円特別控除は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件だ。

📌 転勤族にとっては、「戻るか、売るか」を実質3年で決めろという締切がある、ということになる。

⚠️ 勤務医特有の壁——合計所得2,000万円は「毎年」見られる

もう一つ、あまり書かれていない話がある。

住宅ローン控除には、合計所得金額が原則2,000万円以下という要件がある。そしてこの判定は、初年度だけではない。控除を受ける各年について、毎年行われる。

チワゴ

チワゴ

えっ、最初に通れば13年間ずっと使えるわけじゃないんですか?

どくたろう

どくたろう

毎年見られるんだ。バイトが増えた年だけ控除が消える、ということが起こりうる。

つまり、収入が増えた年、あるいは何かを売却して所得が膨らんだ年は、その年だけ控除が消える。翌年また下がれば戻るが、消えた年の分は戻ってこない。

制度が悪いという話ではない。制度の前提から自分が外れる年がある、というだけのことだ。

🎒 学区で一度だけ検討した話

10年住んでいるあいだに、一度だけ購入を考え直したことがある。子どもの学区をどうするか、という場面だった。

結論から言うと、我が家では学区を変える必要がなかった。だから検討はそこで終わった。

チワゴ

チワゴ

必要がなかったなら、それがいちばんですね。

後悔ではなく、検討して不要だと判断した。それだけの話だ。ただ、家庭によってはここが決定打になることもあると思う。

👥 2拠点生活が合う人もいる

同じ立場でも、家を買った人はいる。

家族の生活拠点を固定して、自分だけが動く。それが合っている人はいるし、実際にうまくやっている。子どもの学校を変えたくない、配偶者の仕事がその土地にある——そういう条件があるなら、むしろ持ち家のほうが理にかなう。

どくたろう

どくたろう

ぼくは覚悟できなかっただけで、覚悟できる人が間違っているわけじゃない。条件が違えば結論も違う。

チワゴ

チワゴ

正解が一つじゃないんですね。ちょっと安心しました。

📊 買わなかったから浮いた、という感覚はない

正直に書いておくと、ぼくには「頭金を貯めていた」という時期がない。買わない前提で暮らしてきたので、浮いたお金という感覚そのものがない。

代わりに残ったものがあるとすれば、住居費が動かせる状態のままだったことだと思う。

賃貸の家賃は毎月出ていく固定費に見える。ただ勤務医の場合、転勤や収入の変化に合わせて住み替えられる余地がある。返済のために職場を選べない、という状況になりにくい。

お金の仕組みを整えるうえで、ぼくが一番重視してきたのは「医療に集中できる状態を保つこと」だった(勤務医が作った『お金の自動化』)。動ける状態を残しておくことも、その一部だ。

🔮 今後、買うとしたら

最後に、今の考えを書いておく。

資産価値が上がると自分で判断できる物件を見つけたら、買うと思う。

チワゴ

チワゴ

じゃあ、いい物件が見つかったら買うんですね。

どくたろう

どくたろう

そう。ただ、それを見つける自信がないんだ。

不動産を見る目を鍛えてきたわけでもなければ、そのために時間を使うつもりも今はない。医師の融資が通りやすいことと、良い物件を選べることは別の話だ(勤務医に不動産投資の営業電話が多い理由)。

だから当面、ぼくは賃貸のままでいる。

📋 この記事のまとめ

  • ✅ 医局人事で3回動き、在籍は2年・2年・現在10年以上。長く住めるとわかったのは事後だった
  • ✅ 買わなかった理由は損得ではなく、2拠点生活を覚悟できなかったこと
  • ✅ 家賃9万円・補助2万円・自己負担7万円。住居費の条件は勤務先で変わり、自分では選べない
  • ✅ 単身赴任なら控除は続くが要件がある。家族で移れば対象外になり、その分の期間は消える
  • ✅ 貸していた家に戻ると、控除の再開は翌年から。事前の届出も必要
  • ✅ 売るなら、住まなくなってから実質3年が期限
  • ✅ 所得2,000万円以下の要件は毎年判定される。超えた年の控除は戻らない
  • ✅ 資産価値を自分で判断できる物件に出会うまでは、ぼくは買わない

⚠️ 免責事項
この記事で紹介している内容は、著者の個人的な経験・考え方にもとづくものです。住宅ローン控除をはじめとする税制は改正される可能性があり、適用の可否は個別の状況によって異なります。また、住宅ローン利用中の物件を賃貸に出せるかどうかの判断は金融機関ごとに異なります。実際の判断にあたっては、国税庁の公式情報および借入先の金融機関にご確認ください。

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